帽子マナー 歴史、用途、屋内外や対人、食事の場での礼節

私が所属させて頂いております帽子業界の方々の言葉で、「帽子のマナー、つまり脱ぐべき場面、被っていても大丈夫な場面についての質問をよく受ける」と言うお話しを頻繁にお聞きしますが、実は私自身は一度もこの質問、された経験がありません。

何をお伝えしたいかと言いますと、

『帽子マナー』を意識している方って、本当はそんなに居ませんよね?

この機会に、帽子のルーツを辿り、それを知ることで、マナーの必要性、その上で帽子のスマートさを見直してみましょう。

帽子の歴史

古くは弥生時代、古墳時代の人物埴輪(ハニワ)に帽子風の装飾があったことから、その時代にも帽子のような、頭にのせる装飾物が存在していたと考えられます。

帽子とは、頭部を守る、権威象徴の表現など、色々な意味で、人間本来備わっていた習慣のようなものかもしれませんね。

日本では、明治4年8月9日の散髪脱刀令(いわゆる断髪令)により髷を結う男性が激減し、髷の代わりとして帽子が急速に普及し、外出時の冠帽率が100%近い数字となったとも言われています。

西洋式の帽子は当初フランス語で「シャッポ」または「シャポー」( 仏:chapeau)などと呼ばれ、「和服にシャッポ」というスタイルで男性を中心に広まりました(後に洋服も普及)。

近年でも夏祭りなどで見かける、「浴衣にカンカン帽」といったスタイリングですね。

前述のとおり帽子は、はるか太古の昔より存在していたと考えられるわけですが、古代ギリシャでは、日除けや旅用として被り物が用いられており、ブリムのついた「ペタソス」という帽子が誕生しました。この「ペタソス」が現代の帽子のルーツとされています。(ペタソスを被ったヘルメースマケドニアのカンプサの貨幣。紀元前5世紀後半から紀元前4世紀ごろ)

時代とともに帽子の目的や形は変化を続けて来ました。身分や階級の象徴、戦闘防具、礼儀として。そして現代のようにファッションアイテムとして用いられるようになりました。

故にそれを身につけるにあたっての「礼儀」や「節度」は存在しています。しかし現代ではカジュアルな用途が大半となり、マナーは曖昧になってしまっています。

基準を明確にするため、とても単純に、問題とならない考え方に整理をしてみました。

帽子のマナー(礼節)

19世紀から20世紀にかけてヨーロッパでは、山高帽トップハットが紳士の礼装として認識されていた。(左画像:『シャーロック・ホームズの冒険』より)

次のような言葉も残っている。

「もしその人物が家の中に入って来て、帽子を脱ぐようなら真の紳士。帽子を脱がないのなら紳士のふりをしている男。そして帽子をかぶっていない人物は、紳士のふりをすることさえあきらめている男。」

つまり帽子とはこの時代のヨーロッパにおいて、スーツを着用し、ネクタイを締めると同義の無くてはならない礼装であり、マナーだったのです。

    この考え方は軍隊でも取り入れられており、入隊教育の中で新兵は帽子の取り扱いについて、講義を受けていたそうです。

    では次に、シーンごとのマナーをみていきましょう。

    屋内外での帽子のマナー

    『屋内では脱帽、屋外では着帽』と言われるのが一般的認識。 これが基本です。

    ここで生じるのが「内」「外」の捉え方や認識の相違。つまり「内」と見るのか、「外」と見るのか?です。

    • 「ショッピングモール」「駅」「空港」など比較的広い空間で、大勢が集まる施設内の場合:如何でしょう? 室内だから脱帽するでしょうか?・・・>答えは:脱帽の必要はありません集まっている人々の目的が多岐に渡り、それらを遮らないからです。但しよほど混雑、あるいはブリムが大きな帽子着用の場合は、通行の妨げとなりますので脱帽し手に持つか収納しましょう。
    • 「映画館」「劇場」「野球場などスポーツ観戦施設」など比較的広い室内空間の場合・・・>答えは:脱帽します何故なら、集まった人々の目的は観戦であり、その視界を遮る可能性があるからです。(※野球場などスポーツ観戦施設であっても屋外の場合、直射日光や雨除け等の外的要因があるので、ブリムの小さな帽子をチョイスし、他の方々の視界を遮らないような配慮が必要です)
    • 「レストラン」「定食屋」「居酒屋」など飲食店は如何でしょうか?・・・>答えは:脱帽します/脱帽しましょう!その店格により考え方は様々ですが、それを気にし始めたらキリがありません。迷うなら細分化することなど辞め、脱帽すれば何も問題は起きません。(但し脱帽に困難な事情があるうえ、高級なお店の場合はお店の方に一言ご相談下さい)

    上記のように考えると、「以外に知らない帽子マナー」とか「判断が難しい帽子マナー」などと考える必要性は無くなりませんか? 簡単で確実になります。

      対人の場面での帽子のマナー

      目上の方、初見の方など、人と会う際の帽子マナーもよく耳にしますが、コレに関してはもっと簡単!

      人とお会いする際は対面したタイミングで一旦脱帽です。 その後、室内での時間を過ごすなら当然脱帽のまま。屋外へ出るならば上記屋外の条件で。 しかし、よほど親しい間柄の場合以外は、脱帽の状態がベターでしょう。この対応であれば、相手に不快感は絶対に与えません。

      実は私自身、過去に一度だけお得意先の社長様よりご指摘(叱責)頂いた経験があります。 脱帽しておけば絶対に間違はありません。(若気の至り、経験不足でした)

      最後、お別れする際も脱帽の状態のまま、外に出て一礼をし着帽。 これで大丈夫です。 好印象です。

      葬儀の場での帽子のマナー

      脱帽=一択!

      帽子は葬儀の際、必ず必要な小物ではないため、迷ったら着用しないのが無難です。マナー違反か否かを考えるより、もともと日本では葬儀に帽子を被る習慣が無いため、遺族や他の参列者から良くない印象を持たれてしまう可能性もあります。

      男性の場合

      洋装の正装(モーニングコート)で参列する場合に限り帽子を被ることができます。

      合わせる帽子は一般的にシルクハットとなり、近年ではあまりモーニングとシルクハットを合わせることはありませんがマナー上は問題ありません。 

      それでも、葬儀会場内ではクロークなどに預けるなどし脱帽します。

      女性の場合

      女性が着用するトークハット(左画像着用の帽子)は外さずにそのままで大丈夫です。自宅からトークハットを付けて参列し、そのまま帰宅して問題ありません。

      • 華美な装飾はNG:花飾りや羽飾りといった装飾がついたものもありますが、華美な装飾の付いた物はNG。短いレース飾りや、小さなリボンの飾りまででお考え下さい。 葬儀用として販売されている物をお選び頂くのがベターです。
      • 色は黒のみ:喪服に合わせる小物は全て黒色で揃えることが最低限、必須条件です。
      • 手袋はセットで必須:葬儀における、トークハット着用時に限ったマナーとして「短い黒の手袋と合わせる」があります。 ※肘まである長い物はNG。弊社ではネイルを完全隠すことが出来るフォーマル手袋『ノノフローヴ』を取り扱っております。併せてご確認、ご活用下さい。

      まとめ

      「常識」や「当たり前」という言葉が世の中で通用しづらくなっていると感じます。『マナー』も同様だと思います。これらは時代とともに変化するため、多くの人と接する際には特に注意が必要です。

      人と接する際も脱帽せず、その容貌を維持し、ポリシーや個性だというのもスタイルではあります。

      しかし『マナー』とは社会で生活していく上で守るべき「行儀作法」「礼儀」「節度」を指し、人間関係を円滑に保つために必要なものである以上、必ず一定量は必要ですね。 その特徴を以下のようにまとめました。

      • マナーとは、相手のことを思いやる気持ちを表す「心」である
      • マナーとは、社会の秩序を保つための「ルール」とは異なり、円滑な人間関係を築くための「礼儀」である
      • マナーとは、交通やビジネス上、食事の際など、さまざまな場面で適用される

      「・・・でなければならない」「・・・であるべき」と言う事は出来ませんが、本流だけでも理解し生活に活かしていけたら、どこまでも良好で円滑な人間関係を築けるはずです。

      それでも何か対人関係で(目上の方など)から叱責を受けるような場面があった際は、脱帽しスッキリと頭を下げましょうm(_ _)m

      ▼参考までに

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